前回記事では、IT技術を活用して有権者が個々の政策に対して直接投票して意思表示するのはどうか?という内容を掲載しました。
その際、今後いくつかの記事に分けて次の内容について考察していくこととしました。
(1)ITを活用した直接民主制のデメリット
(2)直接民主制のデメリットを克服する制度案
(3)そもそも投票率が上がらない本当の理由
(4)ITを活用した直接民主制が実現しない理由
(5)これからの議員に求められる本当の役割
(6)選挙がインフルエンサーの遊び場になってしまった理由と解決策
今回は、上記の(1)と(2)までを考察します。
直接民主制のデメリットとしてよくあげられるのが次の三つです。
①一般の有権者は、議員に比べ政策に対する知見が少ない人が多いため、合理的な判断が出来ない。
②一般の有権者にとって耳あたりの良い政策のみが承認され、真に必要な政策の実現が困難になる。
③デマゴーグに扇動されやすい。
①については、選挙制度開始当初ならいざ知らず、誰でもが様々な情報にアクセス出来るようになった現代においては、必ずしもそうとは言えないでしょう。特定分野においては議員を凌駕する知見をもつ有権者が存在するということもあるでしょう。一方で国防など、高度な専門性が必要とされるものについては、議論を深めるための十分な情報公開が出来ないといった懸念もあるため、どこまでを直接民主制で対応するかについては検討が必要と思われます。
②については、意思決定の方法を直接民主制だけにしてしまうと、そのような問題が発生してしまいそうです。
③についても、多くの有権者が扇動されたとしても冷静なファクトチェックに基づく意思決定が担保される仕組みが求められそうです。
これらを踏まえ、直接民主制のデメリットを克服する制度案として次のような仕組みを提案します。
1.直接民主制で意思決定を行う対象は、基礎自治体(市区町村)が独自財源で行う政策とする。(政令指定都市が設置する行政区は独自で議会を持たないため、今回の対象に関する議論の範疇外)
2.採決の方法として、議員票に加え、期日までに投票があった有権者の投票結果を加えた数を投票数とする。有権者の投票結果は議員定数と同数を最大数とし、賛成・反対の得票割合を反映した数をそれぞれの得票に上乗せする。
(例 議員定数10の議会におけるある政策において、議員の投票が賛成5、反対5の同数とする。有権者投票の割合が、賛成が6割、反対が4割であれば、それぞれに賛成6票、反対4票を上乗せし、総計で賛成11、反対9として、政策は賛成多数で可決とする)
1の仕組みにより、人々の生活により身近な政策に、自らの意思を反映しやすくすると共に、国防や税金の徴収など専門性が高いものや耳障りな政策については、国が推進できる仕組みとしています。
2の仕組みにより、市区町村が行う耳障りな政策についても成立させることが可能となります。
直接民主制導入を構想した直後は、これにより議員を廃止することで、コストを抑えつつより有権者の意思が反映できると思っていましたが、直接民主制の短所を補うために議員という機能自体は残しておく必要がありそうです。
実現するには、議員定数を大幅に減らし(直接有権者の意思を反映することができるんだから、今みたいな大人数は不要)、浮いたコストの一部を使って直接投票の環境を整備するのが現実的ではないかと思います。
次回は、順番が前後しますが(4)ITを活用した直接民主制が実現しない理由と、(3)そもそも投票率が上がらない本当の理由を考えていきたいと思います。