沈思黙考

日常の疑問から巡る思い

2024年東京都知事選総括 ③蓮舫さんはなぜ負けたのか?

都知事選総括として三位に沈んだ蓮舫さんについてもスポットを当てておきたいと思います。

 

当人たちによると、予想外の苦戦・共産党と連携したにも関わらず支持が思ったほど広がらなかったといった感想のようですが、はたから見てればはなから当選の可能性はほぼ無かったし、票を上積みできる要素もない選挙戦を展開していました。

理由は、①反自民・非小池の主張ばかりが前面に出て、自分が都知事になったら何をするのか、小池さんとは違う軸を示すことができなかった(結局日々の生活に大差ないなら、新しい候補にするより現状維持で良い)、②共産党と連携した(共産党と聞くだけでアレルギー反応を示す層が一定数いることは間違いなく、そのマイナスを凌駕できる程のメリットがなかった)、③蓮舫さん自身が良くも悪くも「変わっていない」ため、有権者のニーズから離れた人物になってしまった(今風に言えばオワコン化)にも関わらず、当人や周りがそれに気づけなかった(あるいは気づいていても指摘できない)、などでしょうか。

 

これで勝てると思っていた人が選挙参謀をやってたなら、その人は今後の選挙のために更迭した方が良いと思う。

それぞれの理由について考察していきます。まず理由①について。

思想的にかなり強い思いがない限り、政策的には中道(誰に対してもウケが良い内容)に収斂していきます。その上で例えばLGBTQ+とか、障がい者といったマイノリティへの配慮を盛り込む(そうやって広く支持を取り付けようとするから総花的になったり、自身の主張のなかでも矛盾(例えば行革するっていいながら、多くの人には関係がない文化団体への助成についても進めるとか言っちゃって、当選後に財源確保が難しくなる)を生じさせたりする)ことで、自身の主張を練り上げていきます。

現職も当然同じことをしますし、なんといっても現職には実績をアピールできるという強みがあるので、新しい候補者にとっては、現職との違いを出して、自分が当選した暁の未来を有権者に見せる、夢を見せるみたいなことはかなり難易度の高い作業です。今回(というか毎回?)蓮舫陣営はこれを怠ったと言わざるを得ません。反自民・非小池の劇場型選挙戦に持ち込み、悪を成敗するヒーローとしての蓮舫像を作り上げようとしましたが、小池さんが見事に避けきりました。正義の味方は、悪役が悪役らしく振る舞ってくれないと輝けない。アンパンマンバイキンマンが町で暴れたり、悪さをしないと何も出来ないわけで、ましてや選挙戦は期間が決まっていますから、期間中特に大人しく過ごされてしまったらどんなに強くて立派なヒーローでもアピールの場がない訳です。

劇場型政治一世風靡した小泉さんはそういう意味では敵を作るのが上手でした。郵政民営化では、反対候補に刺客を送り込む形で本来は味方である自民党の中に敵を作り出しました。そして郵政民営化に反対するものは悪であるという風を起こして民意を煽り、敵が自らも必死に動かないと殺されてしまう(落選する)状況を作り出した。こうなると敵も動かざるを得ないわけで、敵が動いてくれると刺客達の正義のヒーロー感が際立つわけです。

蓮舫さんがもし正義のヒーロー路線でいくなら、小池さんがその舞台にたって戦わざるを得ない状況を作らなければいけませんでした。蓮舫さんの支持が小池さんと拮抗している、あるいは小池さんを逆転しているような状況であれば、小泉さんの例で言うなら風を起こすことができれば、小池さんがのってくる(のらざるを得ない)可能性もありましたが、そういう状況になることは、ついぞありませんでした。

となると蓮舫さん自身が当選した暁に何をするのかをしっかり有権者に伝えることが大事になりますが、これが見えなかった。支持が広がらないのはある意味当然と言えるのではないでしょうか。

 

長くなってきたので理由②と③については次回以降の記事で考察します。