沈思黙考

日常の疑問から巡る思い

モチベーションの上がらない硬直化した組織を再生する方法

日常生活のあらゆるところで、人は他者とコミュニケーションを取りながら生活しています。

その中で、ある問題に対してどういう方向で答えを出していくか、議論することがあります。一般的に会議といわれるものです。ここで、色々な人が色々な意見を述べるわけですが、そうした議論の中で明確な答えにたどり着くことはそんなに多くありません。終了時間が来てしまったので結論を出すのは次回会議に持ち越しとなったり、とりあえず前回と同様の方針で進めることになったり...。議論を尽くして結論を得るというよりは「何となくやり過ごす」結果になっていることが多いのではないでしょうか?

議論をしている構成員のなかに明確な序列がある場合(一般的には会社における会議は出席者間に明確な序列がある場合が多いと思います)で、上位者が革新的である場合(この前提条件に適合する環境になかなかならないというのは一旦置いておくとして)、物事が変化する形での結論を得るケースが多いでしょう。一方で上位者が保守的である場合は前例踏襲的な結論を得る機会が多いでしょう。

こういう組織になると、下位者にとっては「さんざん議論を引き伸ばしたあげく、最後は結局上位者の意向(鶴の一声なんて言いますね)で決まるんだからどっちでもいい(どうしようもない)」ように感じられます。こうなるとその組織に帰属するモチベーションは当然上がらないということになります。

会社であれば一般水準よりも高い給与や福利厚生を提供することで人材を繋ぎ止める方法もありますが、根本的な環境が変わらなければ、長期的には高い給与や手厚い福利厚生が負担できる会社に優秀な人材が収斂していくことになるでしょう。組織の抜本的な改革が必要です。

改革の方法は二つあります。

ひとつ目は「下位者の提案を丸ごと受け入れる」ことです。これは下位者の提案が優秀である場合にのみ有効です。多くの場合、下位者からの提案は物事の捉え方が一面的で、ある部分では大きな成果をあげることが期待できますが別の部分に大きな負荷をかけることになる提案内容です。こういう修正要素のある提案をそのまま受け入れることは難しく、実際には細部を修正していくことになりますが、ここで元々の提案にあまり手を入れすぎると「結局上位者が...」というスパイラルに陥ってしまいます。

二つ目は「下位者が自ら発案したように思わせつつ、要所や細部は上位者の描くシナリオに沿うように行動させる」というものです。

この方法だと下位者のモチベーションは維持(場合によっては高まる)されますし、ひとつ目の場合で見たような提案の不備は最小限となります。ただし、この方法は下位者が図に乗る(自分の実力を過信する)可能性があることと、何より上位者がある程度シナリオを腹案として持っている必要があるので、上位者の負担が大きくなります。更にこうしたアプローチによって成果が出た場合であっても、上位者のマネジメントが成功の背景にあることを見抜き、評価できる上位者の上位者(これ以降、上位者の上位者のことを便宜上「役員」と表現します)がいることはかなりまれだと思われます。

 

上位者にとっては、下位者には下位者自身がコントロールされていることは感じさせないようにしつつ、役員に対しては適切にマネジメントしていることを知らしめておく...一見両立させるのが難しそうな二つをこなせる人が上位者にふさわしく、そういう人を見つけ、抜擢し、育てていくことが、硬直化した組織を改革する方法のひとつなのではないかと考えています。