ここまで連載で自民党総裁選について考えてきました。候補者の顔ぶれや基本的なスタンスなどが見えてきたので、現時点での総裁選予想をしておきたいと思います。
まず、大きく二つのシナリオが想定されます。ひとつ目は、このまま報道通りに候補者が乱立するシナリオ。ふたつ目は候補者間で調整がなされ、出馬を取り止めて他の候補者の支援に回る形で候補者が整理されるシナリオです。
ひとつ目の「候補者乱立シナリオ」の場合。
一回目の党員票+議員票で過半数をとるのは難しくなり、議員投票のみの決選投票となる公算が高くなります。決選投票に誰が残るのかという点について。
一人目は「小林さん」です。今回選ばれる総裁で総選挙を戦うことになりますから、まずは選挙で勝てる顔を選ぶのが投票権をもつ議員や党員の基本的な戦略です。小林さんは若く、経歴も華々しい。マスコミ等への対応もそつなく、事務所経費不記載についてもほぼ無風で乗り越えつつあります。刷新感をもたらす顔として党員からの支持も集められそうです。議員票のほうは、裏金議員を多く抱える旧安倍派が支持基盤の主体となりますが、「誰が支持しているのかはっきりしないけど、多くの議員から支持されている」という状態で総裁選まで突入出来れば、そうした議員達の受け皿になれるので広く支持を集められます。逆に小林さんが裏金議員を束ねているような世論形成がなされ、小林さん支持=裏金容認みたいなラベリングをされてしまうと党員票も集めにくくなり、議員票も逃げていく可能性があります。
二人目は出馬会見の出来次第という但し書きつきで「小泉さん」です。世襲議員なので刷新感は小林さんに及びませんが、小林さんよりも更に若いということでそちらを全面に押し出して「生まれ変わった自民党」を演出することが可能です。自身の発信内容が「ポエム」「進次郎構文」と揶揄されることもありますが、それが幸いしてといいますか、世間から致命的な不興を買うような政治的活動はありません(レジ袋有料化は国民の多くに「めんどくさいな」という印象は植え付けましたが、「そのせいで生活できない」とか「自分の情報が知らないうちに誰かにわたってしまいそうで不安」みたいな感情を与える事業には関与していない)。
党員票は若さと、悪目立ちする政治的実績が無いことにより一定程度集めることが可能です。議員票も菅さんのバックアップのもと、無派閥勢力を派閥のように結束させて支持基盤としています。裏金議員に気を使う必要がない基盤を確保できているので、出馬会見で「裏金議員は公認しない」とか「刺客候補を出して総選挙で民意を諮る」等とぶちあげれば、世論を巻き込んで決選投票無しに、一気に決着をつけることも可能だと思います。そのシナリオについては後述します。
さらに当初30日を予定していた出馬会見を9月6日に後ろ倒し出来たことも、他の候補者と横並びでマスコミの前に露出する機会を減らすことができるため、小泉さんにはプラスに働きます(小林さんと小泉さんが生出演して政策を語るみたいな番組をやられると、小林さんと小泉さんの発言内容の差が明確になってしまうため)。
長くなってきたので二つ目の「候補者調整シナリオ」は次の記事とします。