沈思黙考

日常の疑問から巡る思い

自民党総裁選 推薦人からみる候補者同士の繋がり(2) 地味な「政策通」茂木さん・林さんの戦略はいかに?

前回に引き続き、読売新聞オンラインの記事からあれこれ考察していきます。

 

【読売新聞オンライン記事はこちら↓】

小林陣営は当選回数少なく、小泉氏の推薦人は無派閥14人・上川陣営は女性7人…派閥消え様変わり

https://news.yahoo.co.jp/articles/e55908640b115c8af574045fc7e022921ae00027

 

前回記事で派閥支援まとめ型の候補者(高市さん(旧安倍派)、林さん(旧岸田派)、河野さん(麻生派)、石破さん(旧石破派)、茂木さん(旧茂木派))のうち、高市さんの支持基盤について考察しました。今回は茂木さんと林さんについて考察してみたいと思います。

茂木さん、林さんはいずれも政策通・実務派として知られています。茂木さんは外務と経済政策、林さんは外務、農水、防衛の大臣経験を持っています。特に林さんは「困ったときの林」と言われ、閣僚が不祥事で退任したときに後任として引き継ぐようなことも多く、どんな省庁でもそつなく仕事をこなす(しかも宏池会という歴史ある派閥の系譜に所属しているため、党内的にも波風が立ちにくい)ということで重宝されていた印象です。

実務能力はいずれも高く評価される一方、党員や国民からの認知度で言うと小泉さんや高市さんといった候補には差をつけられています(茂木さんはその性格が災いして、官僚に裏マニュアルを作られるほどだという報道があり、逆にネガティブなイメージがついているという意味で、林さんよりは認知度が高いかも...?)。

また、茂木さんを支える旧茂木派はそもそもそんなに大きな勢力ではなく、今回はさらに同派に所属していた加藤さんも出馬しており、支持の広がりという意味で茂木さんは、立候補者の中では早期から厳しい立ち回りとなりそうです。総裁を目指すよりは、いかに自分をうまくアピールして勝ち馬に乗るかが大事な戦いになっていきます。本人もそうした状況を理解しているからか、そこまで尖った政策は出しておらず(茂木さんの主張のうちインパクトのある増税ゼロは、政策を推進するための財源確保策を述べたものであり、政策自体は受け入れやすい)、他のどの候補者の政策とも比較的融合しやすいものとなっている気がします。

では、最終的にどの候補と連携を深めていくか。現時点で一人に特定するのは難しいですが、まず、小泉さんが早々に優勢という状況になれば、小泉さんとの連携を模索するしかありません。しかし小泉さんは菅さんや二階さんが担いでいる候補なので、相乗りしたところで自身がそこまで優遇されるということはありません。茂木さんとしてはなるべく接戦に持ち込み、第二位となる候補と連携することで逆転を狙うような立ち回りとなりそうです。議員のなかで二位になるのは高市さんか河野さん(麻生派の支援次第)、小林さんあたりでしょうか。国民に人気と言われている石破さんは議員の間で支持がないので、連携すべきかの判断が難しいですが、逆に石破さん側が議員からの支持を固めたいと思えば、茂木さん辺りに共闘を打診するシナリオも有るかもしれないですね。共同記者会見などを見ていると、小泉さんから「茂木さんのお考えと同様...」のようなフレーズも出てきています。最終的には茂木さんは小泉さん勢力に吸収されるような形になるかもしれません。

林さんは今のところ表だって特定の候補との関係の近さみたいなものを感じさせる機会はありません。林さんは旧岸田派の支持を基盤としているので、候補者のなかではそれなりに堅い支持基盤を持っていると見て良さそうです。高市さんや石破さん、小林さんなど支持基盤の比較的弱い有力候補と今後の論戦を通じて協調点が見つかれば、どこかの陣営と連携していくこともありそうです。個人的には小林さんの支持基盤は若手・世襲議員が中核となることから、林さんの安定感や経験は貴重なものだろうと思います。小林さんが総理大臣、林さんが官房長官といった待遇で受け入れるような展開もあるのではないか(更に言えば、そこに同じ旧岸田派からでた上川さんも重要閣僚として参画してくる)、小林さんがそんな形で党内支持が広がりきらない政策通候補を取り込むことができれば、小泉さんに対抗していく軸の一つを形成できるのではないかと思っています。