前回・前々回に引き続き、読売新聞オンラインの記事からあれこれ考察しています。
【読売新聞オンライン記事はこちら↓】
小林陣営は当選回数少なく、小泉氏の推薦人は無派閥14人・上川陣営は女性7人…派閥消え様変わり
https://news.yahoo.co.jp/articles/e55908640b115c8af574045fc7e022921ae00027
今回はこれに加えて、推薦人集めに失敗して立候補を断念した斎藤さんの小泉さん支持表明から色々考えてみたいと思います。
【時事通信社記事はこちら↓】
斎藤経産相、小泉氏を支持 自民総裁選「刷新感が重要」
https://news.yahoo.co.jp/pickup/6513946
自民党総裁選立候補締め切りを目前に控え「総裁選の戦いから撤兵する」として立候補を断念した斎藤さん。出馬を目指す会見を行った際も「ルビコン川を渡る覚悟」など、場面々々で歴史と言うか戦争ものを想起させる言い回しが引っ掛かる方です。
そんな斎藤さんが突如として小泉さん支持を表明しました。小泉さんにとっては野田さんに続いて二人目の援軍が現れた形となります。野田さんの場合はまだ選択的夫婦別姓の推進派という面で思想的・政策的な合致点があり、小泉さんの支持表明にはタイミングは別として納得感がありました。しかし今回の斎藤さんの支持表明には「疑問」を感じざるを得ません。
確かに斎藤さんは小泉さんと当選同期で関係も深いと言えると思います。しかし前回総裁選で斎藤さんは石破さんを支援しており、元々旧石破派(水月会)に所属していたこともあり、政策的な理念は石破さんと近いものを持っているのではないかと思います。更に小泉さんは立候補者討論会などで毎回「中身のなさ」を指摘されており、地方票獲得の勢いも鈍化していると言われる状況です。この状況下で小泉さん支持を派手にアピールする理由が斎藤さんにはありません。
それでも斎藤さんが小泉さん支持を派手に表明した理由は次の2シナリオが考えられます。
【シナリオ1 かねてより小泉陣営と調整を続けていて、第二の矢として支持表明を依頼されていた】
これはシンプルなパターンです。立候補断念時から小泉陣営と接触を続けており、断念直後は野田さんが第一の矢として小泉さん支持を表明し、総裁選中盤のタイミングで第二の矢として斎藤さんに支持表明をお願いされていた。それぞれの見返りは野田さんが選対本部長(周囲からの反対で表面上は選対本部長を置かないことになりましたが)、斎藤さんが組閣時の官房長官というところでしょうか。
【シナリオ2 小泉陣営からの打診に加え、優位に立つ石破陣営からも小泉さん支持を表明するよう打診された】
個人的にはこちらのシナリオの方があり得るし斎藤さんも燃えるだろうなと思っています。
元々立候補断念時から、シナリオ1同様小泉陣営からは支持してもらえないかという打診は来ていました。官房長官ポストなどの話もシナリオ1と同様です。それでも斎藤さんは首を縦に振らなかった。党内野党とまで言われた石破派に長いこと所属するわけですから、それなりに気骨のある人だろうと推察します。一総理候補者に過ぎない小泉陣営からのポストちらつかせ位で懐柔されるようでは石破派は務まりません(褒めてます)。
だから立候補断念時は特定候補の明確な支持表明は有りませんでした。
その上で斎藤さんは石破陣営に接触します。石破さんは露骨な選挙戦略としての懐柔は嫌うタイプなので、いくらかつての仲間とはいえ、立候補を目指すと表明した斎藤さんに自身を支持してくれと言うお願いは、それまでしていなかったと想像します。そこへ斎藤さん側から連絡が入った。斎藤さんは石破さんを支持する意向があるが、どのようにアピール・支援すれば良いだろうか?と。
石破陣営は候補者が出揃って初の公開討論などの手応え、それに基づく新聞などの各社報道をみて、自身が優位な状況に立ちつつあること、逆に小泉さんの答弁が思った以上に不安定で支持が頭打ちになっていること、それ以上に高市さんが猛追していてこのままだと石破-高市で決選投票となる可能性まで有りそうだと言うこと。
石破さんとしては、高市さんが来るより小泉さんの方が与しやすく、万一破れたとしても小石河連合を組んでいた位ですから、小泉内閣ではそれなりのポストを貰えるだろうと想像できます。一方の高市さんが来ると、「女性初の総理大臣」という力にも押されて小泉さんが来るより敗色の色が濃くなるかもしれない、更に高市内閣では自らがどのように扱われるか不透明(安倍さんの後継者としての高市さんであれば、そんなに良いポストが回ってくるとは考えにくい)です。
それならここは、そもそも期待していかなかった援軍申し出なのだから、小泉支持を表明してもらって世間に小泉さん優勢の風を吹かせて貰った方が良いのではないか、更に言えば実際の投票の段階で石破さんと書いてくれれば良い。「苦肉の策」の呉将、黄蓋の役割となるがやってくれるか?
石破さんからのこの申し出を意気に感じた斎藤さん。派手に小泉さん支持を表明し、ネットで「ポスト欲しさ」「次の選挙に勝ちたいだけの男」等と世間から鞭打たれる状況となっています。
更に言えば同時並行的に、いま勢いのある高市さんの郵送問題について総理が森山総務会長と協議し、口頭注意に加えて更なる対応が必要と逢沢選挙管理委員長に要請したという記事が出ました。
【時事通信社記事はこちら↓】
自民総裁選「正当性問われる」 岸田首相ら、文書郵送で追加対応検討
https://news.yahoo.co.jp/articles/41abf0af7e628bd5919a734527ee5887b618971d
選挙期間中にこうした動きをするのは露骨な高市いじめとなります。判官贔屓な国民感情としては「高市さん頑張れ!」となりますが、実際の投票には国民は無関係です。投票権のある議員や地方党員達に対して「高市さんを支持してはいけない」と一生懸命メッセージを発しているのです。ちなみにこの森山さん。元々は森山派という小派閥のトップでした。ルーツは小泉さん父の時代のYKK(山崎・小泉・加藤)の一角をなす山崎派になります。その後石原伸晃さんが派閥のトップを務め、同氏が落選した後は森山さんが派閥の長を務めていました。
森山派は二階派・麻生派とも関係性としては悪くないので、その辺りから高市潰しの依頼があった。また岸田さん(岸田派)もその意向に同調して今回の協議となった可能性があります。
長くなってきたので今回はここまでとして、次回の記事で決選投票の予想とシナリオを考えていきたいと思います。