【書評/レビュー】十二国記、何から読み始めるか問題への処方箋(2)-挑戦する勇気が欲しい方へ-

挑戦する勇気がほしいあなたへ
図南の翼あらすじ
新たな挑戦を始めるあなたに読んでほしい物語

挑戦する勇気がほしいあなたへ

「十二国記の何から読めばその世界観を満喫できるか」を考えています。

十二国記の魅力について紹介するなかで、ひとつのシリーズのなかに様々な要素が含まれていると説明しました。どんなジャンルを読みたい人にでも十二国記はおすすめできると思うのですが、自分が読みたいと思っている内容と合致する巻じゃないと「こういうのを求めていた訳じゃない」ってなっちゃうんですよね。だから取り敢えず十二国記の「○○」を読んでおけば間違いない、みたいな作品はなくて、これから読もうと思っている人のニーズに合わせた巻を紹介することが重要になってきます。

今回は「挑戦する勇気が欲しい方」へおすすめする一冊、『図南の翼』です。

図南の翼あらすじ

今作の舞台は十二国あるうちのひとつ、恭国です。

恭は先王が倒れてから二十七年、王座が空位となっています。十二国記の世界では王がいないと国が荒れ、荒廃が進むと普段人々が暮らしている街には出没しない妖魔が出るようになります。最初は狂暴性もそこまで高くない妖魔ですが、それでも妖魔は人を襲い、街を破壊するので国の荒廃はさらに加速します。すると以前より狂暴な妖魔が街に出るようになって...とどんどん荒廃が加速度的に進んでいく負のスパイラルへと引きずり込まれてしまいます。

主人公の珠晶は恭の大富豪の家に生まれた十二歳の少女です。生まれたときから王座に王はなく、年々荒れていく街を見ながら大きくなりました。通っている庠学(学校みたいなものです)の老師が妖魔に喰われて亡くなり、一度目は別の老師が来て庠学は継続されましたが、二度目の今回は庠学自体を閉めるという決定となりました。

「王がいればこんなことにはならないのに...」大人達はそう言いながら自らは昇山(麒麟に会いに行き、麒麟が王気を見出だせばそこで叩頭を受け新王が誕生する)することもなく、金持ちは家の塀を高くして窓には鉄格子をはめ、用心棒を雇い、普通の人々は嘆くだけです。

そんな様子に嫌気がさした珠晶は、自分が王になればそれでよし、なれなくても自分が昇山したうえで王の不在を嘆くのと、何もせずに王の不在を嘆くのでは意味が違うと考え、自ら昇山することを決意します。

昇山するためには妖魔が跋扈する黄海を越えなければならず、黄海への入り口に続く街を目指す道中で出会う誰もが十二歳の少女にそんなことは出来る訳がないと諦め、珠晶に帰宅を促します。ただ一人、謎の青年利広を除いては。

そうした長旅を経てようやく街に着いた珠晶の前に、黄海で妖獣を狩って生計を立てる頑丘という男が現れます。やり取りの末、珠晶は頑丘、利広とともに昇山を目指すこととなります。

新たな挑戦を始めるあなたに読んでほしい物語

無謀とも思われる十二歳の少女の挑戦と、不思議な巡り合わせでその挑戦をサポートすることになる人々。黄海の中でも数多くの人々と出会い、彼らを巻き込みながら昇山を目指します。たった一人の少女の思いが、やがて多くの人を巻き込んで現実となっていく物語は、新しいことへの挑戦をしゅん巡する読者に勇気を与えてくれること、間違いなしの一冊です。