沈思黙考

日常の疑問から巡る思い

「辞めたい」石破さんの四面楚歌

 

サンドバッグ化した石破さん

自民党新人議員への10万円配付問題が致命傷となりつつある石破さん。個人的には石破さんは自らの判断として総理辞職を早晩決断すると思っています。「辞めたい」石破さんの思いとは対照的に、周囲は必ずしもそれを望んでいるわけでは無さそうです。野党からはもちろん党内からも責任を問う声が上がり始めていますが、どちらもどうも本気度が見えません。石破さんを国民の不満のはけ口とするために、見せしめとして嬲り倒しているような印象です。それぞれの立場に視点を変えてみると今の状況がよくわかる気がします。

野党は石破さん続投の方がありがたい

まずは野党。野党の中にもグラデーションはありますが、一貫しているのは「今夏に控える参院選で戦うことになる敵の総大将である自民党総裁は、なるべく人気のない人が良い」ということです。例えばここで石破さんを強硬に揺さぶって総理の座から引きずり下ろしたとして、仮に次の総理として高市さん辺りが出てくると、初の女性総理が率いる参院選となり、党が団結する大義名分が出来上がります。「待望の保守本流」といった持ち上げられ方をすれば、国民としても何となく支持してしまうという可能性が高くなってしまいます。

また、野党のイメージ戦略としても強硬な抵抗による引きずり下ろしは、「国会を停滞させている、何でも反対するだけの旧来型の野党」のように国民に映るために慎重と思われます。報道でも批判の急先鋒として映るのは共産党で、その他の野党はこの問題に乗じて目立とうという動きは見せていません。野党の中で完全に埋没している立憲がちょっと動いている程度で、今国民の支持が集まりつつある国民民主党や、自民党と実質連立のような形を取って政策に関与していくことを狙っている維新はほぼ静観と言って良いような構えです。彼らとしては「自分たちが動かなくても駄目なら勝手に自滅する」位な受け止めではないでしょうか。

与党も「火中の栗」を拾う人がいない

続いて与党。今夏の参院選で改選となる議員からようやく総理責任論が出始めましたが、お尻に火がついたような議員以外への広がりは限定的と言ってよさそうです。「参院選を戦えない」と参院総会で総理交代の声をあげた西田さんは旧安倍派です。派閥による声の抑え込みが十分に効かない議員が、我が身可愛さに声をあげたというのが実態のような気がします。

こうした動きに対して麻生さんや岸田さんといった、石破総理誕生を後押しした党重鎮には目立った動きが見られません。水面下ではそれぞれ当然準備をしているでしょうが、本音としては敗戦確実の今夏の参院選までは石破さんにサンドバッグの役割を担ってもらって、そこでの大敗を理由に石破総理退陣、新総理のもとで仕切り直しというシナリオを描いていると思われます。そういう意味では選挙を自力で勝ち切る強さのない参院改選組は実質「見捨てられた」と言っても良いかもしれません。

低空飛行の政権は官僚にとっては懸案課題解決のチャンス

最後にちょっと触れておきたいのは官僚の思惑です。低人気の石破さん。支持率の低い今なら何をやってもこれ以上下がることはないと踏んで「高額療養費制度」の見直しを仕掛けたと思われます。総理へのレクが成功して国会審議となったものの、患者団体からの反対の声に押されて見直し凍結となりました。

普通に民間保険に入っている一般国民とすれば、今回の見直しによる負担増は保険でカバーできる範囲が多く、直接的なダメージはほぼありません。保険未加入で収入も限られるような人にとっては、より治療費がかかるようになるというもので、そこまで税金で補填する必要があるのか?ということを総理が丁寧に(サンドバッグとなって)答弁してくれれば良かったものを、「声の大きい」団体に押されて凍結してしまった(表立って反対の声を大きくあげていたのは立憲とれいわ位でした)。

これによって高額療養費制度見直しについて、今まで以上にアンタッチャブルな領域としてしまった罪は大きいと思います。良し悪しは別として、住民基本台帳ネットワーク制度を凍結して、実質構想的にはほぼ同じのマイナンバー制度を実現するのに10年以上かかった訳ですから、「一旦凍結」という決定が将来の政治の選択肢を狭めてしまうという影響は甚大なものがあります。

 

そもそもお金にクリーンと思われていた石破さんがどうして10万円配ったのか、黒幕はいるのかについて、次回考えて行きたいと思います。