先日このブログで、パワハラ問題に対応するために人事部門ができることについて書きました。
記事はこちら↓
https://sioto310.hateblo.jp/entry/2024/02/21/121657
その中で、対応策として採用しやすい順に
①パワハラ被害者を異動させる
②パワハラ加害者を通常の人事異動のタイミングで他の異動と混ぜる形で異動させる
③パワハラ加害者にパワハラ事実を伝えて処分(けん責、減給、停職)を行う
を挙げました。また、記事の中で学校で発生するいじめ問題はより対応が難しいとも言及しました。学校現場で起こるいじめの認知件数は、年々増加しています。今回はいじめ問題の難しさと対応策について考えてみたいと思います。
あらためていじめ問題の解決の難しさは、個人的には会社におけるハラスメント問題以上だと思っています。
ハラスメントの場合、ある程度の規模がある会社の場合は被害者を別の部署に異動させることで問題を回避することが、比較的容易に可能です(加害者の側には有効な対策を施していないので、第二の被害者が生まれる可能性は残されていますが)。
定期のタイミングにあわない異動になったとしても、もっともらしい理由をつけることは可能です(もちろんこの場合、ハラスメントが原因の異動であることは噂話としては広まることはほぼ確実ですが)。また、同様にもっともらしい理由をつけて加害者を異動させることも可能です。新規開拓の先頭に立ってもらいたいとかいって、一人親方として異動させるなんてことも出来ないわけではありません。
ところが学校内におけるいじめとなると一気に話が難しくなります。
まず、被害者の異動にあたるクラス替えは一年に一回4月が基本です。年度途中にクラス替えを経験したことがある人はそんなに多くないのではないでしょうか。加害者のクラス替えも同様に一年に一回しか基本的にチャンスがありません。
また、高校ならまだしも義務教育の小学校・中学校となると、基本的には住所に基づいて指定された学区の学校に通うことになります。他の小学校や中学校に引っ越しを伴わない形で転校する例は、まれと言えるでしょう。
ここまでで、本記事冒頭に記載したパワハラ問題への4つの対応策のうち①被害者の異動、②加害者の異動は難しいことがわかりました。そして義務教育の場合は当然④に該当するいじめ加害者を退学処分にする、ということも難しいことは容易に理解いただけると思います。
つまり、学校現場におけるいじめ対応は、実質的に③に該当するいじめ加害者にいじめ事実を伝えて処分(指導、成績表に反映、停学)しか取りえなくなります。これこそがいじめ問題がパワハラ対応より難しいと私が考える一番の理由です。
社会人の世界でも難しい対応なのに、学校の場合はいじめ問題・いじめ加害者と真正面から向き合わないと解決できないのです。それを下手すれば新卒の社会人一年目の先生でも行わなければならない可能性がある...これだけでも教職員の成り手が少ない理由が何となく感じられるような気がしませんか?
さらに厄介なことに最近のいじめはスマホによるSNS上でのいじめなど、目に見えにくい方法による場合が増えています。
私は、いじめについては先生や学校に任せきりにするのではなく、外部のより専門的な機関による支援や対応が不可欠だと思います。
アメリカではスクールポリス制度が導入されていたりもしますが、日本の場合は銃社会ではないので武力を殊更示す必要性は高くないことから、よりソフトな形で例えば定年退職した警察官と定年退職した教職員がタッグを組んでチームとなって学校運営をサポートするようなイメージです。それぞれのチームは学校を越えて広域に結び付いて情報交換や連携を行っていて、事例や対応の共有も行います。さらに市町村や都道府県単位でサイバー空間上でのいじめ等の問題行為をパトロールする部隊(各都道府県で現在もサイバーパトロールは実施していますが)とも連携し、そこからの情報提供を受けて学校現場での問題解決に着手します。
そして何より大切なのは、万が一いじめなどの介入案件が発生したとしても、それを現場の教職員の責任にしたり、教職員の昇進や評価に影響を与えないこと、逆に問題を解決すれば昇進や評価にプラスの影響を与えることを明確化することです。
現場で日々奮闘する教職員をチームで支え、教職員が本来の仕事である教育活動に費やす時間を増やせるように、文部科学省や子ども家庭庁(何を所管しているのか私はいまいちわかっていませんが...)が本気で考えるべき時が来ていると思います。このまま現場に負担を押し付けるだけだと本当に教職員の成り手がいなくなってしまうし、何より子どもたちが安心して、健やかに学び育つ環境の確保が難しくなってしまう。
教育現場の負担軽減は待ったなしの問題です。