まさかの高市新総裁誕生で幕を閉じた自民党総裁選。公明党の連立離脱や野党の総理指名に向けた動きが活発化するなど、政治の世界もまさかの事態に揺れているようです。
私は前回記事で「基本的には高市さんは勝てない、勝てるとしたら党員票で圧倒的な数を集め、1回目議員投票でもそこそこの得票を得た場合」としていました。直前の麻生さんによる援護発言もあり、これが実現する形で高市さんが総裁の座を射止めます(他にも小泉陣営の牧島さんや平さんの軽率な言動、小泉さんご本人の決選投票前の謎のお礼だけ演説等、高市さんに票が流れる動きがいくつか重なったことも高市さんの勝因の1つとして考えられます)。
この後が大変です。連立を組んでいた公明党が政治と金の問題を蒸し返して早々に連立離脱、これによりただでさえ与党で過半数を取れていなかったものが更に票を減ずることとなったため、野党(特に立憲)が総理の座を狙えるかもしれないと色めき立っています。今回はこの歴史的な決断に踏み切った公明党と、基本的には最大勢力を持つ自民党が総理になるのが自然な民意の体現となるにも関わらず、政治を混迷・泥沼に引き込むために俄然気を吐いているとしか思えない立憲民主党について見ていきたいと思います。
カリスマを失った公明党の暴走と崩壊の足音
公明党幹部は「連立離脱の検討は今に始まった話ではない」としていますが、はたから見れば突然の変節にしか見えない今回の連立離脱。これには党内(支持母体)で圧倒的なカリスマを持つ存在の死が少なからず影響しているのではないか?と思います。
これまではなんだかんだ自民党に色々な問題があっても、池田さんが「しっかり政権の中枢で、時には自民党を叱責しながら正しい道、より良い方向に向かわせることが私たちの使命」として、ある意味政権のお目付け役を自認して活動してきました。また、自民党が拾いきれないような少数弱者の意見を政策に反映していくようなポジションをとり、特に生活困窮者を対象とする給付金政策などでは制度設計の段階から自民党に対して意見を出していく等していました。
しかし、学会員の高齢化、声を上げる社会的弱者の減少(ゼロにすることは出来ないし、ここまでやれば十分というところは無い部分ですが、それでも連立当時に比べれば社会と繋がれない、社会に包摂されていない社会的弱者は少なくなっていると思います。エレベーターなどのバリアフリーによって、以前よりは障がいのある人でも移動しやすい社会になっているし、病気を抱えた人も働き続けたり社会参画し続けやすい環境が少しずつ整備されています)等により、党の力は確実に弱まっています。その上、与党内でいくら声をあげても聞き入れられないとなれば、お目付け役を自負していた自身の立ち位置も揺らいできます。そうした状況下で圧倒的なカリスマを失い、大きな方向性を見失っているのでは?と思っています。
今回の連立離脱は、実質的に政権を担うことになる確率が高い自民党の保守傾向、右傾化の歯止めとなるストッパーを外すことになります。その是非は今どうこう議論しても仕方がなくて、将来の世代が歴史を振り返ったときに何らかの評価が下されるものなんだろうなと思います。
「数」欲しさに暴走する立憲
一方の立憲民主党。「十数年に一度の政権交代のチャンス」と意気込んでいますが、そもそも何のために政権交代を目指すのか?という大義を設定することを完全に置き去りにしています。
総理になったらゴールではなく、そこからがスタートであり、あらゆる課題に対応していかなければならない。そこまで見据えていたら、憲法への姿勢や国家観といったあらゆる政策のベース部分が異なる政党同士の連合(実態はほぼ野合に過ぎない)を基盤とした政権運営は早晩瓦解することは明白で、ひいてはそういう野合を束ねて国政を混乱させる動きをした自党への信頼感が低下する将来を予想することは難しくないはずです。
それこそ自民党と公明党のように、党の規模に明らかな差があり、表面的には同等と言っていても誰が見ても序列が分かる状態ならいざ知らず、同じくらいの勢力を持つ党同士では常に内部で主導権争いが発生して物事が前に進みません。それでも前に進めるためには絶対的な大義が必要です。この国を良くするため、前に進めるために誰もが「それはそうだよね」と思える大義を立て、その旗のもとに多少の考え方の差があるとしても集まることで野党勢力を結集する。考え方の違う野党が結集するには基本的にはこの方法しかないにも関わらず、その大義が全く示せていない。唯一示しているのは「十数年に一度の政権交代のチャンス」だけ…これでは誰も集まりませんし、呼びかけられた側もこれに応じれば「ただ政権交代を希求するだけの党」という風に見えてしまうので、集まりたくても集まれない。
昭和の激動した政治史のように、例えば自民党内が2つに割れて、非主流派となった一方が野党と組んで政策の継続性を担保しながら政権を奪取した自社さ連立内閣の成立等とは似ても似つかない、ただのドタバタ劇です。立憲が本気で政権交代を目指すなら、それこそ長年「党内野党」と言われていた石破さんの勢力と結集し、自民党内のリベラル議員をごっそり巻き込む形で政策の継続性を担保しながら政権を担う立憲+非主流派自民勢力でどこまで戦えるかを分析する方が、国民民主党や維新の会との連携を模索するよりは可能性があるとすら思ってしまいます。
早速立憲から、自民党内を疑心暗鬼に誘い込むための工作のようなことが仕掛けられているようです。
https://news.yahoo.co.jp/articles/4c749bb9c60266b0cd60a4efc818857236d40a89
記事の通り、非主流派自民がいきなり立憲代表を首班指名となると反動が大きすぎますから、それを和らげる意味で公明党の斉藤さんを首班指名というのは立憲としては中々上手いこと考えたシナリオだなと思いました。ただ、現状では非主流派の末端議員しか名前が挙がっておらず、石破政権において中枢を担っていた人物の名前は出ていないことから、立憲の工作はあくまで立憲内で進行しているだけで、自民党内に切り込めている状況ではないし、自民党非主流派としてもそんなことをするつもりはないということなんだと思っています(そもそも立憲に自民党まで巻き込むような形でそこまで大きなことを仕掛けられるほどの人材がいない。全盛期の小沢さんならもしくはとも思いますが、さすがにもうその力は残っていないと推察します)。
こうやって政治の混迷状態が続くことは国にとって大きな損失です。一刻も早い政治の正常化が望まれます。