沈思黙考

日常の疑問から巡る思い

宏池会解体検討の激震 総理決断に見える宏池会らしさ

自民党の「派閥」に端を発した裏金問題に、岸田総理が自身の出身派閥である「宏池会」解体を言及することで対応しようとしています。

 

そもそも岸田総理、一連の問題が明るみになった頃「総理総裁が派閥の会長であることは望ましくないと判断した」みたいなことを言って派閥から離脱したはずなのに、宏池会解体について言及できるってことは、やっぱり離脱したって影響力は持ち続けており、離脱というのは言葉遊びで実質的には何ら関係ないと自ら証明する形となりました。

 

閑話休題。この宏池会ですが池田勇人が創設した党内でもっとも歴史ある派閥と言われています。総理総裁経験のある出身者は池田さんに加え大平正芳鈴木善幸宮澤喜一と、今回の岸田総理で五人目ということで、伝統と格式の老舗派閥といったところでしょうか。

宏池会は「お公家集団」と形容されることもあります。官僚出身者が多く、政策能力は高いのですが政治闘争に弱いことを評してのものです。

振り返ってみれば党内抗争の末ハプニング解散となった大平さん、政治改革関連法案成立を先送りしたことによる党内の混乱で自爆解散(嘘つき解散とも言われる)に追い込まれた宮澤さんと、まさに政策能力は高いが政治闘争に弱いという評判通りとなっています(当時は壊し屋の異名を持つ豪腕、小沢一郎氏の全盛期ですから今の政界とは全然世界が違うという面はありますが)。

 

さて、そんな保守本流宏池会でキャリアを歩んだ岸田総理。今回の派閥裏金問題による国民からの不信感払拭のために派閥解消に言及しました。

https://news.tv-asahi.co.jp/news_politics/articles/000333237.html?display=full

岸田派幹部への根回しはもちろん、菅・麻生両総理経験者とも会談して事前に自身の思いは伝えていたものと思われます。

www.jiji.com

菅氏としては派閥解消は歓迎(自身が無所属を謳っているため)、麻生氏としては早まってはいけないと思うものの最終的には総理のお考えで(勝手にしろを含む)という方なので、両氏の意見を聞いた上での宏池会解体検討宣言だったと思われます。

 

解散宣言で国民の支持を受けて政権安泰を目論んだのかもしれませんが、世間の反応は今のところ冷ややかです。

https://news.yahoo.co.jp/articles/9b50fd16f45d50e1f0f3da5975ed5c49f681e3d5

「派閥解消に惑わされてはいけない」「議員の収支報告のあり方が変わらなければ意味がない」「派閥に変わる新たな集団が生まれるだけ」

いずれもその通りだと思います。

国民からは支持を得られず、聖域である派閥のあり方を揺らがすような発言をしたことで国会議員からも支持を得られるはずがない総理。

反対する国会議員を敵対勢力として対決することで圧倒的な国民からの人気を得た小泉純一郎氏とは状況が異なり、まさに四面楚歌の渦中に自ら飛び込んだような状況です。

能登半島地震もあり、党内も揺らぐなかで我こそはとまさに火中の栗を拾うような殊勝な議員がいるとは思えないので岸田政権はしばらく続投でしょうが、今回の派閥解体宣言が政権を死に体とさせる決定打となるのではないでしょうか。

政治において数(仲間の数)は力です。派閥という数を自ら放棄し、圧倒的な国民支持も得られなかった総理についていく人はいません。改めて宏池会のお公家らしさが、今回の岸田総理の判断にも見えた気がしました。