沈思黙考

日常の疑問から巡る思い

自民党 野田さん立候補断念から見る党内状況

いよいよ自民党総裁選の告示日である12日が近づくなか、立候補者が固まりつつあります。今回は候補者の一人で、10日に立候補断念の報道が流れた野田さんの動きから、現在の自民党内の状況を考察してみたいと思います。

 

まずは野田さんについてざっくりとおさらい。野田さんについて個人的に最も印象に残っているのは小泉首相が進めた郵政民営化に反対し、その後の郵政選挙において佐藤ゆかりさんを刺客候補として差し向けられたことですかね。結果はそれでも野田さんが小選挙区で勝ちきるという強さを見せたものの、一時離党、程なくして安倍さんの計らいもあって郵政造反組の多くが復党した際に野田さんも復党し、総務大臣マイナンバーの担当大臣などを歴任しています。

総裁選については毎回出馬の意思を示しながら、推薦人20人を集められずに断念が続いていました。過去一度だけ出馬できた際も結果は最下位に沈むということで、党内での野田さん支持の勢力は大きくありません。造反の歴史やリベラル色の強さ、主張もどちらかというと難病の子供を抱えながら仕事をする自身に恩恵が得られるような政策に注力しているように感じられる点が多く、この国をどうしていこうというような大局観を感じることは多くない印象で、その辺りが「同志」を集めにくい原因のひとつなのかも?と感じています。

 

そんな野田さん。今回の総裁選についても立候補を模索していましたが推薦人が集まらず断念、今後は小泉さんの支持にまわると言う報道がなされました。野田さんと小泉さんの主張は比較的近いとは思いながらも、かつて自分に刺客候補を送り込んだ政治家の子を支援する...野田さんとしては悔しさも有るのではないかなと推察します。

推薦人を集められないくらいの泡沫候補が、次期自民党内において影響力を持つためには、自分自身を最大限アピールして高く売っておく必要があります。高く売れる順に次の3シナリオが想定できます。

【シナリオ1】1位と2位の支持率が僅差の時、2位候補を支持して2位候補の逆転に貢献する。

【シナリオ2】1位と2位の支持率が僅差の時、1位候補を支持して1位候補の優位を確実なものにする。

【シナリオ3】1位と2位の支持率に大差がある時、1位候補支持を明確に発信して1位候補優位を世間に印象づける(勝ち馬に乗る)

 

シナリオ1は小勢力が一番力を持つことができる状況です。与野党政治勢力が拮抗しているときの公明党の戦略がまさにこれで、自公連立で議席過半数を維持みたいな状況になると小勢力が「キャスティングボートを握る」状態となり、影響力が大きくなります。

今回の自民党総裁選において、小泉さんが僅差で2位みたいな状況は考えにくいのでこのシナリオは考えにくいでしょう。

 

シナリオ2は、シナリオ1程決定的な要因ではないので感謝の大きさは小さくなりますが、それでも勝利を決定付けるインパクトを与えられるのであればそれなりの感謝の念を相手に植え付けることが可能です。過去の記事で、今回の総裁選は麻生派の動きが見えたときに勝敗がほぼ決まったと見て良いと書きましたが、麻生派が動くときがこのシナリオ1、もしくは2に入ったときだと思っていたからです。

野田さんの動きがシナリオ2に入ったことを示すフラグという可能性もありますが、刺客候補を送られたといった過去の経緯を踏まえると、僅差で優位に立つ小泉さんの優位を確実にするような積極的な支援を野田さんが本当にしたいと思うだろうか...シナリオ2の可能性も低いと考えています。

 

となると、残るはシナリオ3。

小泉さんの勝利は決定的な状況であり、現状を大きく変える可能性のある候補もいない。となれば少しでも早く勝ち馬にのり、勝利を決定付ける動きに貢献する方がましです。小泉さんを積極的に支援したいわけではないけど情勢的にやむを得ない...これなら野田さんが小泉さん支持を明確にして総裁選立候補を断念するのも理解できる気がします。

ただ、総裁選投開票日まではまだ日数があり、ましてや今回の乱戦模様ではこれから予想外の波乱が起こる展開も捨てきれません。麻生派もまだ態度を明確にしていない(菅さんが全面的に支持する小泉さんに後乗りできないという事情はあるものの)中で、野田さんは立候補断念だけを表明し、支持する候補については明言を避けることもできる状況です。立候補断念~小泉さん支持は関係者から漏れた情報ですが、立候補断念後に誰を支持するかは最重要事項ですから漏らすべきではないし、漏れてしまう程度であれば野田陣営の統制もその程度とも言えます。

 

野田さん本人がどのように言及するか、その様子次第で党内情勢をより深く知ることができるのではないかと思っています。